ブログ営業力

今年4月20日に、内閣府、金融庁、中小企業庁の三省庁合同で、今年度末の中小企業金融円滑化法(以後、「円滑化法」と表記)の期限切れをにらんで、ソフトランディングのための対策として「政策パッケージ」が発表された。その中に「今年度中に3,000社を目標に、再生計画を策定する」という方針が盛り込まれている。

「円滑化法」では、企業から金融機関に対して、借入金の原本返済のリスケ(リスケジュール:返済猶予)の依頼があった場合、基本的に受け入れるように要請している。ただし、その企業が1年以内に経営改善計画を策定し、経営改善に取り組むことが条件である。実情は惨憺たるもので、きちんとした経営改善計画を策定して取り組んでいるのは20%前後と推定されている。

金融庁は金融機関の監督指針として「コンサルティング機能の強化」を打ち出しており、支援する企業とそうでない企業を区別するように指導している。つまり経営改善に向け計画をきちんと立て、真摯に取り組んでいる先は支援継続。そうでない先は、廃業も視野に今後を検討するようにということである。

それではリスケ企業が、経営計画を策定せず、策定したとしてもきちんと取り組まずに、今年度末を迎えるとどうなるか? 現状で最悪の予測をすると、金融機関が支援を打ち切る可能性が高いと考えられる。極論だが、金融機関から、「リスケの要請には、これ以上応じられません。約束通り返済(約定返済)できないなら、今すぐに全額返してください」と迫られる可能性があるということである。

前置きが長くなった。このような状況のもと、5月下旬から、複数の商工団体を訪問し、弊社のセミナーのご案内をした際、余談として、「円滑化法期限切れの出口対策について、情報発信した方が良いのではないか?」と提案してみた。各団体、様々な対応であったが、反応の多くは以下の通り。

 

① 会員企業が現実を知らない(知ろうとしない)状況だと思われる。

② それに対して状況をきちんと報告し、警告を発信しないのは、会員に対する背信行為ととられかねない。

③ 会員企業で対象になる可能性があるところについては、適切な対応をとって欲しい。そのために緊急セミナ

ーを企画して、啓発したい。

④ それでも聞いてくれないかもしれないが、企画側にとっては、緊急セミナーを開催して、きちんと対応した

事実を作っておけば、年度明けに、該当企業から責められても、きちんと説明ができる。

 

ホンネも見えてなかなか興味深いのだが、角度を変えて観ると、まさに「営業チャンス」であることに気付くことができる。ポイントは以下のようにまとめられる。

 

① 法改正という、大きな外部環境変化があった。

② それに対して、何らかの手を打たなければならないと、問題意識が生まれる。

③ 会員のことを思い、緊急セミナーのニーズが発生する。

④ その際、ある意味リスクヘッジ的な思考もある。

(②~④は内部環境の変化である。)

 

優秀な営業担当者は、まず①の情報をいち早くキャッチし、それに対してどのような対応がとられているのか観察(②・③)し、付随的な感情も見極めた動きをすると思われる。

すなわち、以下のようにである。

① 各商工団体に対して、「法改正で円滑化法の期限が切られたが、どのような対応をされていますか?」と

ヒアリングして回る。

② ヒアリングしつつ、「円滑化法期限切れに対応した対策」についてのセミナー企画を提案する。

③ 角度を変えて、それを開催することによって、リスクヘッジにもなることを説明する。

この例からもイメージしていただけると思うが、営業担当は外部環境の変化の情報収集が求められる。次にその変化による、ターゲットの内部環境変化を見極めることが求められる。それをもとにした提案をする際、相手のためになることは何か考え提案することが重要である。相手の立場に立って、何を提供してあげれば、喜ばれるかをとことん考えることが大切である。

日常の営業活動の中で気づいたことを上げてみた。少しでも参考にしていただければ幸いである。

営業活動の中で 【岩本 亨】

2012/06/04
岩本 亨

今年4月20日に、内閣府、金融庁、中小企業庁の三省庁合同で、今年度末の中小企業金融円滑化法(以後、「円滑化法」と表記)の期限切れをにらんで、ソフトランディングのための対策として「政策パッケージ」が発表された。その中に「今年度中に3,000社を目標に、再生計画を策定する」という方針が盛り込まれている。

「円滑化法」では、企業から金融機関に対して、借入金の原本返済のリスケ(リスケジュール:返済猶予)の依頼があった場合、基本的に受け入れるように要請している。ただし、その企業が1年以内に経営改善計画を策定し、経営改善に取り組むことが条件である。実情は惨憺たるもので、きちんとした経営改善計画を策定して取り組んでいるのは20%前後と推定されている。

金融庁は金融機関の監督指針として「コンサルティング機能の強化」を打ち出しており、支援する企業とそうでない企業を区別するように指導している。つまり経営改善に向け計画をきちんと立て、真摯に取り組んでいる先は支援継続。そうでない先は、廃業も視野に今後を検討するようにということである。

それではリスケ企業が、経営計画を策定せず、策定したとしてもきちんと取り組まずに、今年度末を迎えるとどうなるか? 現状で最悪の予測をすると、金融機関が支援を打ち切る可能性が高いと考えられる。極論だが、金融機関から、「リスケの要請には、これ以上応じられません。約束通り返済(約定返済)できないなら、今すぐに全額返してください」と迫られる可能性があるということである。

前置きが長くなった。このような状況のもと、5月下旬から、複数の商工団体を訪問し、弊社のセミナーのご案内をした際、余談として、「円滑化法期限切れの出口対策について、情報発信した方が良いのではないか?」と提案してみた。各団体、様々な対応であったが、反応の多くは以下の通り。

 

① 会員企業が現実を知らない(知ろうとしない)状況だと思われる。

② それに対して状況をきちんと報告し、警告を発信しないのは、会員に対する背信行為ととられかねない。

③ 会員企業で対象になる可能性があるところについては、適切な対応をとって欲しい。そのために緊急セミナ

ーを企画して、啓発したい。

④ それでも聞いてくれないかもしれないが、企画側にとっては、緊急セミナーを開催して、きちんと対応した

事実を作っておけば、年度明けに、該当企業から責められても、きちんと説明ができる。

 

ホンネも見えてなかなか興味深いのだが、角度を変えて観ると、まさに「営業チャンス」であることに気付くことができる。ポイントは以下のようにまとめられる。

 

① 法改正という、大きな外部環境変化があった。

② それに対して、何らかの手を打たなければならないと、問題意識が生まれる。

③ 会員のことを思い、緊急セミナーのニーズが発生する。

④ その際、ある意味リスクヘッジ的な思考もある。

(②~④は内部環境の変化である。)

 

優秀な営業担当者は、まず①の情報をいち早くキャッチし、それに対してどのような対応がとられているのか観察(②・③)し、付随的な感情も見極めた動きをすると思われる。

すなわち、以下のようにである。

① 各商工団体に対して、「法改正で円滑化法の期限が切られたが、どのような対応をされていますか?」と

ヒアリングして回る。

② ヒアリングしつつ、「円滑化法期限切れに対応した対策」についてのセミナー企画を提案する。

③ 角度を変えて、それを開催することによって、リスクヘッジにもなることを説明する。

この例からもイメージしていただけると思うが、営業担当は外部環境の変化の情報収集が求められる。次にその変化による、ターゲットの内部環境変化を見極めることが求められる。それをもとにした提案をする際、相手のためになることは何か考え提案することが重要である。相手の立場に立って、何を提供してあげれば、喜ばれるかをとことん考えることが大切である。

日常の営業活動の中で気づいたことを上げてみた。少しでも参考にしていただければ幸いである。

新規開拓営業に役立つコミュニケーションスキル その2~挨拶と名刺交換~【産業 学】

2012/05/28
産業 学 

新規開拓営業に役立つコミュニケーションスキルについて4回シリーズでお伝えしております。

 

その1.まずは見た目から
その2.挨拶と名刺交換
その3.聞き方
その4.話し方

 

第2回目は「挨拶と名刺交換」です。第一印象というのは、とても大切ですね。一度“この人は○○な人だ”と思われたら、良くも悪くもそのイメージは付いて回ります。勿論、商談の中身が伴わなければ意味はないですが、良い印象を与えておくにこしたことはありません。

 

前回は“見た目”ということで、身だしなみについてお伝えいたしました。今回は最初の挨拶・名刺交換の場面をイメージしています。

 

初めて会う方に、みなさんはどのような挨拶をされていますか?
「こんにちは」「失礼します」
第一声は爽やかに発しましょう。元気よくハッキリと発音することが大切ですが、大声を出し過ぎると、かえって迷惑になります。時々、ただ元気が良いだけの人を見かけますが、これが通用するのは20代前半までですので、気を付けましょう。営業の上級者になると、相手の雰囲気に合わせて声色や表情を変えて対応することができる人もいます。しかし、これには高度な技術を要します。
不慣れな方は、とりあえず“清潔感”を意識するとハズレがありません。
○:清潔な人=しっかりした人=信頼できる人
×:不潔な人=だらしない人=信用できない人
人間というのは、見た目の雰囲気に加え、話し方や声色によっても相手の人物像を判断しようとします。

 

では、“清潔感”はどのように表現したら良いのでしょうか。
・言葉づかいが正しく、明瞭であること
・礼儀正しく、明朗であること
・機敏な所作
個人差はあるかもしれませんが、これらを意識していれば、概ね“清潔感”が醸成されることでしょう。

 

第一声で爽やかな風を送ることができたら、続いて名刺交換です。
名刺交換は、意外に正しくできていない人が多いですね。
まずは基本編です。
・自分の名刺を渡すときは片手で「○○と申します」
・相手の名刺を受取るときは両手で「頂戴いたします」
“自己紹介は己から”が基本ですので、自分の名刺を先に差し出すのが基本ですが、当然相手も同様の教育を受けています。ですので大抵は“同時に交換”することになります。ここで気を付けたいのが名刺の高さです。相手の名刺よりも少しだけ低く差し出すのが礼儀とされています。
しかし、ここでも同様に先方が自分より低く名刺を出してくることがあります。営業職同士の名刺交換では、時折“名刺の低くし合い”が繰り広げられることもあります。そんな時は「高い位置から失礼します」と先に渡してしまうか、「お先に失礼します」と“同時交換”ではなく、先方の名刺を先に受取り、後から自分の名刺を差し出すことで、“高低差”を解消するという方法があります。

 

名刺交換の後、実はここからが大事です。
名刺というものは、その人の分身です。粗略に扱ってはなりません。名刺を頂戴したら、相手の名刺は自分の名刺入れの上に載せた状態で両手で持ちます。このとき名刺の高さは腰から上、できれば胸元(心臓)の高さで持つようにしましょう。これは“とても貴重なものを頂戴した”という気持ちを全身で表わしています。
着席後は、そのまま名刺入れの上に載せた状態で左前に置きます。何故左前なのか?というのは諸説ありますが、一般的には右利きの人が多く、メモ書きをする際に「相手の名前を直ぐに確認できるように」或いは「手を動かした拍子に相手の名刺を弾いたりしないように」などと言われています。何れにしても“先方に失礼の無いように”ということを意識しての行動ですので、資料を使っての説明等の際はで名刺が埋もれないように、そっと横に避けたり位置を変えるのがマナーです。

 

また、相手の名刺に日付や場所、特徴等を書き込んでしまう人が居ますが、あまり感心できません。名刺はその人の分身です。相手の顔に直接落書きをするようなものですので、控えた方が賢明ですね。
顧客情報の管理に関しては、別の機会にお伝えしたいと思いますが、名刺記載の情報に加え、顧客訪問履歴等は顧客管理台帳を整備して記録することをお勧めします。

 

今回お伝えした内容は、何れも基本的なことばかりですが、意外にできていない方が多いです。その分、きちんと対応される方は相手に良い印象を残すことができます。何事も基本が大事ということですね。

 

次回は、聞き方についてお伝えいたします。

 

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新規開拓営業に役立つコミュニケーションスキル その1~まずは見た目から~【産業 学】

2012/04/23
産業 学 

新規開拓営業に役立つコミュニケーションスキルについて4回シリーズでお伝えしたいと思います。

 

その1.まずは見た目から
その2.挨拶と名刺交換

その3.聞き方
その4.話し方

 

第1回目は「見た目」です。人間には外見で相手を判断してしまう、という習性があります。これは『新規開拓営業のコツ その3.初回精査』でも触れましたが、俗に“メラビアンの法則”と言われているものです。

 

アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが、人の行動が相手にどのような影響を及ぼすか、という実験をしたところ、言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%という法則を導き出したこと起因しています。

 

この実験結果から転じて、最近では「人は見かけで相手を判断する=メラビアンの法則」と言われるようになっていますが、本来の実験の趣旨とはやや解釈が異なります。

 

とは言え、話し手の身なりや話し方が相手に与える影響が大きい、というのは疑う余地もありません。特に“身だしなみ”に関しては、意識すれば誰でも直ぐにできることなので、実践しない手はないですね。

別に、高価なブランド物のスーツを着ろ、とか、高級腕時計をしろ、とかいうのではありません。清潔感のある服装をする。具体的には、スーツやYシャツにシワがないか?Yシャツに汚れはないか?ネクタイは奇麗に結べているか?靴は磨いてあるか?等がチェックポイントです。

 

昔と比べ、現在は男性の服装もバリエーションが増えてきました。Yシャツはカラーシャツを着る方が増えていますが、彩りには気を配りたいですね。たまに、スーツもYシャツもネクタイも同系色、という方を見かけますが、避けた方が良いですね。ネクタイの色ひとつで、顔立ちが変わって見えますので、新規訪問・リピート・クローズと場面によって使い分けたいところです。

 

次回は、挨拶と名刺交換についてお伝えいたします。

 

その1.まずは見た目から >> その2.挨拶と名刺交換

新規開拓営業のコツ その6~アフターフォロー~【産業 学】

2012/03/26
産業 学 

6回シリーズでお届けする“新規開拓営業のコツ”。最終回の第6回目は『アフターフォロー』についてご説明いたします。

 

その1.事前準備
その2.アポイントの取り方
その3.初回精査
その4.2回目以降の訪問
その5.クロージング
その6.アフターフォロー

 

苦労の末、ようやく案件も締結できて、営業マンの仕事はこれでお終い。と思って気を抜いてはいけません。顧客満足の高低は、アフターフォローの有無で大きく異なります。では何故顧客にご満足いただく必要があるのでしょうか?“売れればそれで良い”などと考えている方はいないと思いますが、念のため確認です。それは顧客の満足こそが、次なる新規顧客開拓に繋がる第一歩だからです。

 

言葉としては良く聞きますが、実際“満足”とはどういう状態なのでしょうか。
商品を導入する前の状態(期待値)と導入後の状態(実感した価値)を比べたとき、後者が前者を上回った場合、顧客は“満足”していると言えます。“期待値>実感した価値”のときは勿論、“期待値=実感した価値”でも“満足”にはなりません。すなわち“不満”です。
では、どうしたら“期待値<実感した価値”となりうるのでしょうか。

 

分かり易いパターンは次の2つです。
①そもそも、それほど期待していなかったが、使ってみたら存外良かった
②相応に期待していたが、それ以上に良かった。

 

①に関しては、そもそも期待値が低いわけですから、その値を上回るのは容易に思えます。しかし、それだけ期待値が低い状態で購入に至るでしょうか。“期待していないけど買う”というのは、大して欲しくもないモノに金を払うわけですから、よっぽど安いのか、或いは資金的な余裕があるのかですね。このような状況を期待するのは、現実的ではありません。
そうすると、大抵の場合②ということになりますが、これはこれで難しいものです。
自らが説明して、顧客に納得していただいて、購入時に顧客が期待した以上の価値を実感してもらわないといけないわけですから。

 

では、どうしたら良いのでしょうか。
a.顧客の期待値と想定しうる顧客の実感する価値との差を予め埋めておく
b.クレームが生じたときの対処法を講じておく
c.クレーム発生時には迅速に対応する
の3点ですね。いきなりクレームという、やや後ろ向きな言葉がでてきましたが、クレームは顧客からの貴重なご意見ですので、対応次第で満足度も向上します。順を追ってご説明しましょう。

 

a.顧客の期待値と想定しうる顧客の実感する価値との差を予め埋めておく
そんなことできるのか?と言われそうですが、不可能ではありません。言い換えると、顧客の期待値を予め数値化しておくといこうことです。前回、クロージングの際には当該商品導入時の顧客便益や成功事例を数値を使って具体的に説明することが大切と説明しました。このときに、“御社の場合”という数値を具体的にシミュレーションして提示するのです。提示したその数値が判断の基準になりますので、数値達成⇒満足、数値未達成⇒不満足ということができます。当初の商談では会話に挙がらなかったような話が後から出てくることもあります。“そんなことは聞いていない”と突っぱねたい気持ちも分かりますが、そういうときは相手も感情的になっています。まずはじっくり相手の話を聞いて、“当初はこのようにお話しされていましたね。○○の数値はこの様に達成して改善も見えていると思います”などと、一旦は引いておいて、その後、理と礼を尽くして説いていけば、状況も見えてくるはずです。もっとも、大前提としてシミュレーションの数値を達成していなければならないですが、それは次でご説明します。

 

b.クレームが生じたときの対処法を講じておく
こう書くと、“最初からクレームが出ると思って仕事をしているのか?!”とお叱りを受けそうですが、クレームというのは大なり小なりあるものです。大事なのはその時の対応方法です。過去にあった問い合わせやクレームとその対応結果を整理しておくと良いでしょう。
実は、いわゆるクレームは、ほんの些細なことをきっかけとして生まれることが多いのです。最初はちょっとした問い合わせや意見だったものが、その時の対応がいい加減で大きなクレームになることが少なくありません。逆に、顧客の意見を酌みとって真摯に対応すると大変感謝され、満足度が上がります。“クレームも対応次第で感謝の言葉”とはこのことですね。

 

c.クレーム発生時には迅速に対応する
これも当然のことなのですが、人はマイナスの事象からは目を逸らしたいものです。クレームも同様です。できれば逃げ出したい、そんな気分に追いやられることもあるでしょう。しかし、前述の通り、クレームは初期対応が非常に重要です。臆せずに迅速に対応しましょう。

 

顧客にとって“モノを買う”という行為は、契約をしたり代金を支払ったりという、その瞬間だけではありません。事前の調査や営業マンとのやり取り、購入後の一定期間も全部含めた活動が、“買い物”なのです。購入した商品そのモノに対する満足度が低かったとしても、事前事後の対応如何では、顧客満足度を高めることは十分に可能です。

冒頭に、“顧客の満足こそが、次なる新規顧客開拓に繋がる第一歩”と申し上げました。一連の購買活動を通して満足した顧客は、その喜びを周囲の人間に触れて回ります。いうなれば、あなたの営業マンとして活動してくれるのです。最近、多くのサイトで“口コミ”による評価が流行っていまるのが良い例です。これは個人の消費に限らず、企業経営者の同業者同士でも同様の情報交換がなされています。“悪事千里を走る”の諺どおり、悪い噂の方が勢いよく伝達されます。
“何よりも顧客のために”を意識した営業活動で、満足度を高め、顧客を味方につけることが望ましいですね。

 

6回シリーズでお届けしてきました“新規開拓営業のコツ”はこれで終了です。
いずれも極めて一般的で基本的な内容だったと思います。しかし、残念ながら多くの営業マンがこれら基本的事項ができていません。数字を意識し過ぎて功を焦ると、忘れがちなことばかりですが、逆に一つひとつ押さえていけば、目に見えて成果として顕れることでしょう。

 

次月以降では、営業現場で役立つコミュニケーションスキルについて説明していきたいと思います。

 

 

その5.クロージング << その6.アフターフォロー

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新規開拓営業のコツ その5~クロージング~【産業 学】

2012/02/27
産業 学 

6回シリーズでお届けする“新規開拓営業のコツ”。第5回目は『クロージング』についてご説明いたします。

 

その1.事前準備
その2.アポイントの取り方
その3.初回精査
その4.2回目以降の訪問
その5.クロージング
その6.アフターフォロー

 

初回精査から、数回の面談を経て、顧客のニーズが十分に把握できたら、案件の締結に向けて話の舵を切るわけです。これがクロージングです。クロージングにおける小手先のテクニックは幾つかありますが、それよりも押さえておきたい大きなポイントが4つあります。
それは、
1.顧客便益
2.成功事例
3.比較優位
4.商品機能
の4つです。これら4つの要素は、クロージングに至るまでに顧客にしっかりとご認識いただく必要があります。

 

1.顧客便益
顧客が自社の商品・サービスを利用することで得られる便益を指します。ベネフィットとかメリットという言葉の方が耳馴染みが良いかもしれません。営業マンが自社の商品を売り込もうとすると、とかく商品の機能説明に走りがちです。しかし、これはあまり意味がありません。当該商品に興味のない状態で、いくら機能の説明をされようと、うるさく思われるだけですし、逆に興味があれば、自身でインターネット等から情報を仕入れたり、積極的に質問したりするでしょう。

 

営業マンがもっとも顧客に伝えなければならないのは、顧客便益です。自社の商品を利用することで、どんな便益が得られるのか、可能な限り具体的に提示しましょう。
・顧客が抱えている問題点を解消する
・導入による費用対効果が大きい
・顧客の将来的な夢を語る
の3点が分かり易い例ですね。自社の商品を導入することにより、顧客の問題点が解消でき、問題が解決されるのであれば、あるいはその可能性が大いに期待できるのであれば、顧客は商品の導入を真剣に検討することになるでしょう。また、現状にそれほどの不満を感じていない場合でも、導入後に費用対効果が明確に得られるような提案であれば、やはり導入に際して前向きに検討することになります。顧客の夢を語るというのは、“御社(あなた)の将来像を共に考えます”というようなもので、将来的な便益を伝えるのみならず、相手に親近感を与え、売り手と買い手との間のコンフリクトを取り払ってしまうという効果が期待できます。ただし、言い回しによっては非常に胡散臭くなってしまうので要注意です。

 

2.成功事例
いくら便益を示したところで、人間というのは疑り深いものです。或いは、会社組織では、担当者の一存で決められる事項は決して多くなく、上司・上層部の承認を得なければ、ことが進まないということも多々あります。特に、他者に説明を要する場合、“○○で導入していて成果が出ているから”とか“○○では○%の費用削減に成功した”等の成功事例は、非常に分かり易い説得材料です。事例を説明するときには、極力具体的に、数字を使って説明すると効果的です。
『○○社で○%の売上アップ』『○○社で○%のコスト削減』等ですね。

 

3.比較優位
顧客は、当該商品に興味を示すと、類似の他社商品の調査も合わせて開始します。“導入メリットは分かった。確かに成功事例もある。だが本当にこの会社の商品で良いのか?他社でもっと良いモノがあるのではないか?”といった具合に、競合商品との比較検討をするのです。
ですので、先手を打って競合との比較優位をこちらから伝えてしまうのです。このときに大切なのが、“主観的になりすぎないこと”です。そりゃ自社の商品ですから他社より優れていると言いたい気持ちは分かるのですが、オーバートークは厳禁です。かえって顧客の信頼を失います。『△△の点では劣っているが、御社の必要とされている○○に関しては当社の方が優れています』と正直に伝えることで、“この営業マンは嘘をつかない。信頼できる”という印象を与えることができます。顧客が何を必要としていて、何をそれほど重要視していないかは、ヒアリング段階で精査しておくべき事項です。

 

4.商品機能
繰り返しになりますが、営業マンは自社の商品・サービスを説明したがります。しかし、これはあまり効果がありません。機能の説明というのは、あくまで確認です。上記の3つに関して十分理解が得らた状態で、それを証明するための材料として機能の説明をするのです。終始商品説明だけするような営業トークは避けた方が賢明です。

クロージングにおける重要な要素として、4つをご説明いたしました。“あれ?価格は伝えないの?”と思われるかもしれません。当然価格も説明します。費用対効果の説明では購入価格が分からなければ、話が伝わりません。しかし、クロージングの要素として重要かと言えば、必ずしもそうではありません。価格を伝えるのは最後で良いのです。数字と言うのはとてもインパクトがあります。事例や他社比較等は極力数字を使って説明した方が良いですが、最初から価格を伝えてしまうと、価格の印象のみが強烈に残り、全て価格を基準に判断されてしまいます。自社で扱っている商品・サービスに圧倒的な価格優位性があるのであれば、それもまた良いでしょう。しかしながら、価格による優位性というのは、最も脆いです。当社を凌ぐ資本力を持つ他社が参入してきた時点で、直ぐに崩壊してしまいます。また、単なる価格競争を続けていくと、結果同業同士で足の引っ張り合いをするだけで、業界全体が疲弊してしまいます。長い目で見ても得策とは言えません。
“安く売ることが顧客にとって一番良い”というとんでもない勘違いをしている営業マンが残念ながら結構いますが、価格の安い・高いは顧客の価値基準により異なるもので、絶対的な額ではありません。定価で買っても安いと思う人もいれば、半値でも高いと思う人もいるのです。
営業の基本は、顧客のニーズを十分に把握し、顧客が真に望むものを適正価格で提供することです。

 

 

次回はシリーズ最終回『アフターフォロー』です。

 

その4.2回目以降の訪問 << その5.クロージング >> その6.アフターフォロー

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