中小企業経営
寺院を建てている三人の石切り工の話である。「何をしているのか」と聞かれたとき、第一の男は、「これで暮らしを立てている」と答えた。第二の男は、「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしている」と答えた。第三の男は、その目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら「大寺院をつくっている」と答えた。ドラッカーの「マネジメント 下」からの逸話である。研修でよく使用する題材である。
第一の男も、第二の男も、仕事の目的(寺院を建設する)を意識して働かなければ良い仕事(人に感動を与える寺院作り)はできない。第三の男こそ仕事の目的を理解して働く男であり、経営管理者にふさわしい。
つまり、組織目的を理解し、「目標による管理」がマネジメントに必要であるということをドラッカーは言いたかったのだと思う。
翻って、個人としてはどうか、目標による管理は自己の目標と組織目標の一体化にある。マズローの欲求多段階説では自己実現が個人の欲求の最高位にある。人間はパンのみに生きるにあらずという新約聖書の言葉があるように、自分なりの生きがいを見つけるため、夢探し、自分探しの探究をし続けることかと思う今日この頃である。
ビジョンの探求 ~3人の石切り工より~ 【長屋勝彦】
長屋 勝彦
寺院を建てている三人の石切り工の話である。「何をしているのか」と聞かれたとき、第一の男は、「これで暮らしを立てている」と答えた。第二の男は、「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしている」と答えた。第三の男は、その目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら「大寺院をつくっている」と答えた。ドラッカーの「マネジメント 下」からの逸話である。研修でよく使用する題材である。
第一の男も、第二の男も、仕事の目的(寺院を建設する)を意識して働かなければ良い仕事(人に感動を与える寺院作り)はできない。第三の男こそ仕事の目的を理解して働く男であり、経営管理者にふさわしい。
つまり、組織目的を理解し、「目標による管理」がマネジメントに必要であるということをドラッカーは言いたかったのだと思う。
翻って、個人としてはどうか、目標による管理は自己の目標と組織目標の一体化にある。マズローの欲求多段階説では自己実現が個人の欲求の最高位にある。人間はパンのみに生きるにあらずという新約聖書の言葉があるように、自分なりの生きがいを見つけるため、夢探し、自分探しの探究をし続けることかと思う今日この頃である。
ビジョンの実現 【長屋勝彦】
長屋 勝彦
ある顧問先企業の社員教育研修のことである。
社長が百数十万円出して購入したアンドリュー・カーネギーの自己啓発に関するテープ レコーダーを聞く。今回のテープは、自分がたてたビジョンを実現させるためにどのように行動したか事例を交えて物語風にアレンジしたものである。
編集者が視聴者を飽きさせないようにという意図から編集しているせいか自己啓発に関心を持っている者にとっては興味ある内容である。しかし、master-mind、enthusiasm、personal-initiativeという英単語が頻繁にでてくると、自分の力量アップに熱心な従業員(作業者)でも、聞く気が失せる。
社長は、それでも同じことを繰り返し聞いていれば一つでも何かためになることに気付き、その気付きを自分の仕事や生活に活かしてくれればよいということで、この方式を取り入れた。テープを聞き終わった後、その内容を要約し、関連するテーマについて作文を書いてもらい、そのテーマについて話し合う。
今回は、「ビジョンの実現に向かって行動するための道筋を草稿する。そして、その計 画を実行するに当たっては退路を断ち不退転の気持ちで臨む。たとえ、苦境に立ち至った時も決してビジョンを実現しようとする気持ち(情熱)を失くさない。大切なことは、一つの区切り毎に自分の行動を振り返り反省し必要な時は軌道修正し進んでいくことが大切である。」といったことを解説し、要は「今回の話も、日ごろから言っている様に、目標達成のためにはPDCAサイクルを廻し行動することが必要だ。」と締めくくり、「自分の人生の目的、生きがいと会社、上司に望むこと」というテーマで作文を書いてもらった。
受講者の一人から「人生の目的、生き甲斐といわれても自分は考えたことがない。先生の生き甲斐は何ですか。」と聞かれた。しばらく考え、「どこにでても引け劣らない一流の人物をつくることかな。」と答えた。その後、問答を繰り返したが、東京に帰る時間となり研修を終了した。
この会社の研修を始めて8年になる。社長からは知識だけでなく仕事に対する取組み姿勢についても教育して欲しいといわれているが、個人的には社員と本音で話し会える間柄になっているかと思い、この仕事をやっていて良かったと実感する。同時に、質問した受講者は20代前半の作業であるが、これを期に自分について考えるようになってくれることを期待する。
畳屋さんの地道な営業活動に感動! 【岩本 亨】
岩本 亨
マンション住まいながら、畳が好きで、洋室を改装して和室をつくり、寝室にしている。田舎の古い日本家屋で生まれ育ったことに起因しているのだと思う。
ひと月ほど前、その和室の畳表を張り替えた。玄関を入ると、青畳の匂いがして、心地好い。
畳を入れて以来、10年近く何の手入れもしてこなかった。さすがに畳表がささくれて、衣服に付いてしまうのが気になり始めていた。
そんな二年ほど前のある土曜日のお昼前、電話が鳴った。たまたま受話器を取った私に、50代だろうか?女性の穏やかな声で、「畳屋ですが、和室はありますか?」「何年住んでいますか?」「畳表の張替はされてますか?」とごく自然に聴かれた。ついつい状況を素直に話していた。
電話のセールスだと、「隙があれば売り込むぞ!」と言わんばかりに、比較的若い方から掛かってくることが多い。私自身、長く営業に携わっているため、すぐにチェックモードになってしまう。ぞんざいな応対をすることが多く、ろくに話も聞かず、受話器を置くことがほとんどだ。
ところが、この女性は違っていた。聴き方が良かったのだろうか、やさしく諭すような雰囲気も醸していた。その時は、外出直前だったこともあり、それ以上の話はできなかったが、興味があることは伝わったと思う。
しばらくするとその電話のことは忘れてしまっていたが、畳の状態はまた徐々に悪化し、気にもなっていた。
半年ほど後、また電話がかかってきた。おなじ女性だった。「その後、如何ですか?」「見積もりは無料だからさせてもらえませんか?」と聞かれたが、その時も時間がなく、連絡先を聞いて電話を切った。
そしてまた半年後、「如何ですか?」の電話。「ちょうど、もう限界だなって思っていたんですよ」と答えていた。それからすぐに見積もりをしてもらい、ひと月もたたないうちに、張り替えが完了した。
見積もりをしてくれた職人さんに、この女性のことを尋ねたところ、3人くらいの方が事務仕事の合間を縫って、電話かけをされているとのこと。リストアップは電話帳から。かけて反応のあったお宅を、丁寧にフォローされているようだった。
電話営業を経験された方ならお分かりだと思うが、100件電話して2~3件好反応があればよい方で、多くの場合、セールスとわかった途端に切られてしまう。悪くすれば罵声まで浴びせられてしまう・・・。電話を掛ける方も心が荒み、応対に余裕がなくなり、嫌でたまらなくなる。そんな人からもらう電話が、受け手に心地好いわけがなく、悪循環に陥ってしまう。
しかも、次から次へと新しい電話帳を使うため、情報が蓄積されない。それを補完するための様々なソフトウエアも販売されているようだ。
私はそれを否定はしないが、営業の基本は営業担当者が地道な努力を、正しく積み重ねられるかどうかにあると考えている。
営業研修で講師をする際も、そんな考え方をベースにお話しする。受講された方のアンケートで、「精神論に過ぎない!」とコメントされることもある。
何か理解してもらうための良い具体例がないものか?と思っていたが、これからは「畳屋さんの営業の女性がね・・・」と説明してみようと思う。
今日も帰宅して青畳の匂いを嗅ぎ、その営業の見事さを思い出し、皆さんにもお伝えしたくなった。
営業力について 【遠藤弘之】
遠藤 弘之
7年ほど勤めていた某中堅樹脂加工メーカーの知人らから、飲み会に誘われ、猛暑の中、楽しい場を持った。 現在、この会社では、彼らと共に市場に出した商品が、大きく育ち、業績に大きく寄与しているとの話で、大いに盛り上がった。
この会社の中で、射出成形部門は、バブル時代の設備投資とその後の中国などの攻勢で、事業のリストラに追い込まれていた。
そういう時に、昔から付き合いのある某化学メーカーの人が、全くの異業種である機械メーカーの人を連れてきて、ある高機能性の商品の開発を提案された。
直観として、出来ると思い、さらに市場動向、周辺技術(知財含む)を調べ、開発をスタートした。 何度も壁にぶつかりながら、3年目で基礎技術構築と特許出願にこぎ着けた。 更に、リストラ対象の技術と設備が利用できて生産も始めるころができ、会社にとっては、最良の姿を構築することができた。
その開発と生産開始の間の紆余曲折は、いろいろあったが、仲間に恵まれ、何とか上手くいった。 更に、その後の新興国などの設備投資の背景も受け、今でも順調に伸びているようである。
今思い起こせば、成功の要因には、いろいろあるが、一番は、最初の“社外の人脈の情報”がきっかけであったことだと思う。 今のような、変化の激しい時代には、異業種の情報(人脈)は、新しい発見を生み出す基になる可能性があり、これこそ、技術屋ばかりか、営業担当者にも、共通の“営業力“の一つであろうと思う。
私の使命 【長屋勝彦】
長屋 勝彦
中小企業診断士として登録しコンサルタント業を始めて来年4月で15年が経過する。
企業診断に当たり、最初に、その企業のビジョン、ミッションついて経営者にきく。
その企業のあるべき姿は何であり、リーダーはあるべき姿の実現に対しどのような思いを持ち経営に当たっているかを知るためである。
これまでかかわった中小企業の経営者の方の多くは、小粒でも良いからきらりと光るものの創造を目指すことにより、自分の属する組織体の従業員の生活向上を願う方が多い。
リーマンショック時における厳しい景況下でも従業員の減給に対し苦悩し、たとえわずかな額(餅代)でも賞与を支給しようとする姿勢からもうかがえる。
小粒でも良いからきらりと光るものとは競合企業と比較し差別化された製品開発であるが、資金・人的資源の限られた中小企業では簡単に実現できるものではない。それは、苦闘しながらも顧客ニーズにマッチしたその企業の得意技を磨くことであり、事業化され軌道に乗るまでには長い時間を要する。その支えとなるのがビジョンであり、ミッションである。
そのような中小企業として、幾多のピンチを乗り越え、苦節20年にして世界のオンリーワン企業に成長した企業とかかわらせていただいていることを誇りに思う。
中小企業、若い人の支援を通じて世の中の役に立つことが私の使命であり、社会貢献できる企業、人材の育成が私のビジョンでもある。
以上