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韓非子を読む 吉田健司

2016/02/21
吉田 健司

先日、上野の東京国立博物館平成館で開催されていた特別展「始皇帝と大兵馬俑」を鑑賞してきた。私は、古代中国の歴史や思想に関する本を好んで読んでいるので、大変興味深く意味のある時間を過ごすことができた。
自称企業戦士だったころ、私は中国の古典の中でも特に「韓非子」の愛読者だった。「韓非子」は、韓の王族に生まれ、荀子に学んだ韓非の著作とされる。中国古代の法家思想の代表的な書で、韓非は法治主義による政治改革を秦の始皇帝に説き、始皇帝の法思想に影響を与えたとされる。
「韓非子」は、人間学の書ともいわれる。君主が大衆を支配するための説からは、「人」について多くを学ぶことができる。人間は自分の利益を追求する存在であるという韓非の非情な人間観から学ぶことも多い。
君主の心得、君主が臣下を充分に働かせる要点、臣下の任用と待遇についての注意、君主に対して人臣がおこなう八つの悪事、破滅に至る十の過ち、重臣の専横がはびこる体制への批判、国が亡ぶ兆候、歴史故事などへの非難、世間で賞賛される八種の人物への批判、学者・雄弁家などへの批判、権力者に進言するその説き方の難しさなどを説いていて、人の集まりである企業、変化する時代に直面している企業の経営に多くの示唆を与えてくれると思う。
「韓非子」を出典とすることわざなども興味深い。守株(しゅしゅ)、あるいは株を守るは、古い習慣に捉われて時勢に応じた対処のできないことのたとえとされる。 ある時、農夫が畑を耕していると兎が切り株にぶつかって死んだので、農夫は難なく兎を得ることができた。 それ以来、仕事をせずに再び兎が切り株にぶつかるのをいつまでも待っていたという故事から。
現実を鋭く見つめる「韓非子」は、一読する価値のある書であると思う。