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「中秋の名月」の夜に思うこと 吉田健司

2015/09/28
吉田 健司

かつて企業で本社勤めをしていたころ、思い悩んでいたことがある。企業において、毎年部門の目標を立て、目標の達成に向けた行動計画を策定し、現場で取り組むべき施策を決めて、各現場がPDCAを回して業務活動をしているとしよう。現場のある組織にとって、課題は多岐にわたり複数ある場合、優先順位をつけて選定したいくつかの施策を、その時の組織目標として取り組むことになるだろう。バーナードの公式組織の理論でも共通の目的は組織の要素の一つとされている。
私が当時思い悩んでいたことは、この施策(複数の施策のうちの一つの施策)が達成された後のことである。たとえば、3年間ほど取り組んだ結果、当初課題と認識した状態ではなくなったため、改善したと判断し、その施策に代わり新たな施策に取り組むことにしたとしよう。ところが、施策として取り組むことをやめると、1年もしないうちに解消されたはずの課題がまた姿を現してくる。そんな経験をされたことはないだろうか。「なんで定着していないのか」と、愚痴のひとつもこぼしたくなる。
最近になって、答えはSECI(セキ)モデル、共同化・表出化・連結化・内面化の四つの知識変換モードにあるのではと思うようになった。当時私は、個人の暗黙知からグループの暗黙知を創造する共同化と暗黙知から形式知を創造する表出化に興味を持ち、組織的知識創造の理論を勉強していたが、形式知を暗黙知に体化するプロセスである内面化については、あまり関心がなかったように思う。施策として取り組んだ結果、一時的に改善しても、組織メンバー一人ひとりに内面化しなければゴールではないであろう。残念ながらSECI(セキ)モデルを人材育成の視点で学ぼうとしていた当時の私には、そこまで考えは及ばなかった。
冒頭の思い悩むきっかけは、当時の部長に質問されたことだが、20年近くたった今なら、質問への答えができるかもしれない。

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