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社長のやる気スイッチはどう入ったのか? 【岩本 亨】

2015/03/02
岩本 亨

とある地方の温泉旅館。客室数は15室。ここ数年毎期赤字が続いていた。貸出している金融機関担当者A氏は、以前は頻繁に旅館を訪れ、社長に経営状況を確認したり、具体的な取り組みをアドバイスしたりしていた。しかし、いくら言ってもB社長が代わらないので半ばあきらめて、ここ5年くらいは放置していた。

最近になってB社長から「業績が上がってきたので、一度見に来て下さい」と連絡があった。A氏が半信半疑で訪問したところ、部屋はきれいになっており、露天風呂付きの部屋もできていた。「借入金の返済猶予をしていながら、隠し財産でもあったのか?」と疑心暗鬼になり問いただした。B社長は、「金が無いから、家族でできる所まで改装し、プロにしかできない箇所は引退した大工さん等を自分で探して、個別にお願いして安く対応してもらった。1年に1室ずつのペースでコツコツ進めている。旅行代理店との付き合いも一切やめ、ネットエージェントとに絞り込んだ。口コミ評価ポイントが徐々に上がってきて、それが励みになっている。」そんな答えが返ってきた。事実確認のためお忍びで泊まりに行き、深夜自分で重機を操作している社長夫妻を確認した。

A氏がB社長に、「あんなに言うことを聞かず、やる気もなさそうだったのに、何で変わったの?」と聞いたところ、B社長から「娘が大きくなるにつれ、近隣の旅館が怪しげな商売をしているのを見て『ウチも同じなの?』と思われるのが嫌だった。また、息子にやる気のない父親と見られるのも忍びないと思った。それがきっかけでとにかくできる所まで自分の力で考えて、工夫してやってみようと思った。それを続けていくとお客さんにも喜んでもらうようになった。仕事が面白くなってきて、一生懸命に取り組んでいくうちに黒字化してきた」と答えが返ってきた。

変われば変わるもので、最近はB社長から時間に関係なく電話がかかってくるようになった。先日も深夜0時過ぎに携帯が鳴った。出てみるとB社長から「先月の試算表をまとめたら、計画以上に黒字になっていたので嬉しくて電話しました!」と弾んだ声が。既に寝室にいたA氏は「嬉しいけど、深夜は勘弁して・・・」と悲鳴を上げていた。

今日聞いたばかりの「やる気になれば想像以上のことができる」という実話を披露させていただきました。いくら周りが口を酸っぱくするくらいにアドバイスしても、本人がその気にならないと変わらない。その気になりさえすれば、この例の様に劇的な変化をもたらすことも有りうる。組織の中の人の活かし方にも通ずる話ですね。