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切磋琢磨した絆~海図なき大航海に向かって~ 【長屋勝彦】

2012/01/09
長屋 勝彦

2011年の大きな出来事は公私ともに3月11日(金)の大震災であった。震災当時、秋田県のある機械加工工場で研修中であった。当日は研修終了後社長と共にその日の秋田新幹線で帰途に着く予定であった。震度7の揺れが数分続き全員が工場の駐車場に出た。揺れが治まり工場に入り機械を点検したが計測器は壊れ、機械はいざり、この状態での運転は不可能な状態であった。

 

買い置きの電池がありテレビ、ラジオでニュースを見聞きした。東京まで辿り着く飛行機、新幹線による移動手段はなく、本日までお世話になったホテルに宿泊することにした。電話が通じないのでその工場の社員の方が車で、ホテルに行き宿泊を申し込み、受け付けをしていただいた。電気が通じていないので信号機が作動せず車の運転には気を使ったということを聞いた。

 

幸い社員の家、家族の方には問題はなくそれぞれが運転する機械の状態を確認、上司に報告して終業前ではあるが16時頃に退社した。

 

翌日は休みの土曜日であったが全員出社した。出社しても停電中であり機械を運転することはできないが故障した機械の点検、修理にあたった。

 

研修では、「リーダーとは部下を通して組織目的の効率的達成を図る人であり、部下が積極的、意欲的、自発的に達成しようと仕向けることが大切である。」ということを常に言っているが、日常業務にはその研修効果が発揮できていない状況にある。

 

社員は機械の点検を終え帰宅したが、工場長及び幹部社員は午後からも残り社長と共に今後の対応について協議した。夕方になり電気、水道、ガスのライフラインが回復した。リーダーの自発的行動により、工場長が中心となり各リーダー、社員に連絡し翌日の日曜日から操業を開始することになった。

 

今回のことで、震災前日の木曜日を含め4日間滞在したことになるが、私的には、ホテルの方には快く宿泊を引き受けていただくと共に炊き出しをはじめ何かとお世話になった。又、工場の社員の方にも弁当をごちそうになったり、携帯電話を充電していただいたり、細かなことまでお世話をいただいた。

 

社長とは、常々「リーダーに如何にして危機感を持たせることができるか」、「そのためにはどうすればよいか」ということを話しているが、今回の震災ではお互いに助け合い、率先して自分たちの職場を守ろうとする社員の気合を感じた。当工場は、この時点で、組織の成立要因である、目的意識、貢献意欲、コミュニケーションのすべてを満たしていたということになる。テレビ番組等でも言われる日本人の絆が当工場にもあることを実感した。

 

早速次の月(4月)の朝礼で、「当工場もやる気になればできる。この気持ちを忘れずに危機意識を持ち仕事をして欲しい」と話したが、現在の雰囲気は「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」、元に戻ったような感じもする。

 

しかし、教訓として、中小企業とはいえ、1社、1工場は危険、秋田工場の他、現在の本社工場のあり方も見直さねばという結論を得た。リスク管理に対する対処の仕方もシビアになった。

 

2012年も海図なき航海であり、行く先には荒波が待っている。企業は環境対応業であり、その荒波をうまく乗りこえることである。当社の強みはトップクラスの企業を顧客として持っている。その顧客維持のためには技術のブレークスルーが必須である。

 

さすれば、TPPを活用し世界の企業を直接顧客とし取引することも夢ではない。そのためには、お互いに傷をなめ合う絆ではなく、切磋琢磨した絆が必要である。

 

余談ではあるが、3月13日の日曜日工場長の運転により新潟までドライブをし、上越新幹線で帰途に着いた。