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当事者意識 【岩本 亨】

2012/03/05
岩本 亨

警視庁の調査によると、首都圏で大地震が起こった時に「必ず帰宅する」と回答した人は、45%に上った。理由の一番は、「家族が心配だから」。働き盛りの父親が多いのか、「家族は自分が守る」という当事者意識を強く持っている様子が窺える結果だと感じた。

私は「岩本組」という、中小企業診断士の研究会の「組長」としても、5年近く活動している。現在は50人ほどの「組員」がいる。2ヶ月に一度の定例会と、個別にチームを組んでの中小企業支援活動が主な活動である。参加している「組員」の相互啓発と自己研鑽を目的とした、個々人の自主性をベースとした研究会である。最近、活発に活動する組員と、そうでない組員が明確に分かれてきた。定例会に参加する顔触れも固定化傾向である。今月17日に予定している定例会への参加予定者も10名ほどしかいない。この状況に対して、つい最近「自主性がベースの組活動なので、当事者意識を持ってほしいと」メッセージを送ったばかりである。

私自身がコンサルタントとして、経営が厳しくなった企業の相談に乗ることも多い。経営者と話していると、二つに分類できることがわかる。危機感を前面に表して「何とかしたい」と必死な人と、「本当に厳しさがわかっているのか?」とこちらが心配になるような人とである。従業員も危機感を持っている人と、そうでない人がはっきりしている。

先日面白い話を聞いた。とあるショッピングセンターにある時計屋さん。愛想の良い店員Aさんが、時計を買った時や、修理をお願いした時など、値引きしてくれたり、おまけをくれたり、何かとサービスしてくれていた。それを気に入って利用していた人も多かったようだ。ところがそのお店は閉店した。2ヶ月後、Aさんが経営者としてお店を新規開店した。お店の雰囲気はほとんど前と変わらず、Aさんの愛想も良かった。ただ、サービスに対しては、非常にシビアになった。少しでも利益確保しようという一生懸命さが伝わってくる。一店員の頃とは全く変わった。自分で経営するのとそうでないのとの違い。まさに当事者意識の差であろう。

当事者意識の希薄な人に、それを持ってもらうこと。組織の中では、リーダーの永遠の悩みであろう。実際に個人がその環境に置かれれば、持たざるを得なくなる。ではいかにしてそれを実現するか・・・? 私自身、独立して初めてすべてが自己責任の状態になったことに気づき、当事者意識を強くした経験がある。当事者意識を持って主体的に行動する方が、充実した人生を送れると、個人的には思っている。