ブログ岩本亨

島根県は私の出身地。その浜田市に石州瓦製造会社 亀谷窯業有限会社がある。縁あって、当社の代表取締役 亀谷典生氏とお話しする機会があった。石州瓦は、島根県東部(出雲市近辺)で産出される「来待石」を釉薬として使う、赤瓦である。三州瓦(愛知)、淡路瓦(兵庫)とともに日本の三大瓦の一つ。当社は昔ながらの製法にこだわり、手作り工程を残して製造している。焼成温度は他社が1,200℃程度であるのに対して、1,350℃。社長は世界一の高温焼成と自慢している。この温度で焼き上げれば、耐久性が上がるため、100年以上使っている例もある。例えば北海道檜山郡江差町の北海道本願寺派江差別院庫裏の瓦は当社製で、明治13年使用開始以来、今でも使われている。

一方で石州瓦でも大量生産の設備を持って、すべて機械生産している会社もある。手作り工程の有無と焼成温度差とにより、瓦の単価が倍近く違うとのこと。また、日本建築による家の新築が右肩下がりで減少しているため、和瓦の需要も少なくなっている。つまりマーケットが縮小する中で、高品質・高価格の和瓦で勝負をしなければならない厳しい環境におかれている。

それを打開するため、亀谷社長は、タイルや食器・雑貨の製造をし始めた。昔ながらの石州瓦の製法を応用すると、タイルもミリ単位の制度で焼成できる。釉薬の風合いも良く、タイルはリッツカールトン東京の和食店で使われ、食器は高級料亭等でも使われ始めた。中にはオーナー調理長が視察&買い付けに来る例もある。他社ではできない技術で差別化を図っている。ちなみに山口県の川棚温泉の名物「瓦そば」(最近は全国に広がっているらしいが)の瓦は、全て当社製。他社製は耐久性が低いため、すぐに割れてしまうそうだ。

亀谷社長によると、「いきなり『うちの瓦を使ってくれ』と言っても理解されない。まずは身近なものから認知してもらい、良さを分かってもらって、ファンになってもらうところから始めないと、需要開拓できない」とのこと。

創業210年(文化3年:1806年)。伝統製法にこだわり、他社が衰退して、廃業や全て機械化していく中、何とか生き延びてきた。気付くとオンリーワンの会社になっていた。その差別化できる技術を持って、発展されることを心よりお祈りしたい。

地元にこのようなこだわりの会社と社長がいらっしゃったことが非常にうれしかった。

こだわりをどのように理解してもらうか?

2015/05/04
岩本 亨

島根県は私の出身地。その浜田市に石州瓦製造会社 亀谷窯業有限会社がある。縁あって、当社の代表取締役 亀谷典生氏とお話しする機会があった。石州瓦は、島根県東部(出雲市近辺)で産出される「来待石」を釉薬として使う、赤瓦である。三州瓦(愛知)、淡路瓦(兵庫)とともに日本の三大瓦の一つ。当社は昔ながらの製法にこだわり、手作り工程を残して製造している。焼成温度は他社が1,200℃程度であるのに対して、1,350℃。社長は世界一の高温焼成と自慢している。この温度で焼き上げれば、耐久性が上がるため、100年以上使っている例もある。例えば北海道檜山郡江差町の北海道本願寺派江差別院庫裏の瓦は当社製で、明治13年使用開始以来、今でも使われている。

一方で石州瓦でも大量生産の設備を持って、すべて機械生産している会社もある。手作り工程の有無と焼成温度差とにより、瓦の単価が倍近く違うとのこと。また、日本建築による家の新築が右肩下がりで減少しているため、和瓦の需要も少なくなっている。つまりマーケットが縮小する中で、高品質・高価格の和瓦で勝負をしなければならない厳しい環境におかれている。

それを打開するため、亀谷社長は、タイルや食器・雑貨の製造をし始めた。昔ながらの石州瓦の製法を応用すると、タイルもミリ単位の制度で焼成できる。釉薬の風合いも良く、タイルはリッツカールトン東京の和食店で使われ、食器は高級料亭等でも使われ始めた。中にはオーナー調理長が視察&買い付けに来る例もある。他社ではできない技術で差別化を図っている。ちなみに山口県の川棚温泉の名物「瓦そば」(最近は全国に広がっているらしいが)の瓦は、全て当社製。他社製は耐久性が低いため、すぐに割れてしまうそうだ。

亀谷社長によると、「いきなり『うちの瓦を使ってくれ』と言っても理解されない。まずは身近なものから認知してもらい、良さを分かってもらって、ファンになってもらうところから始めないと、需要開拓できない」とのこと。

創業210年(文化3年:1806年)。伝統製法にこだわり、他社が衰退して、廃業や全て機械化していく中、何とか生き延びてきた。気付くとオンリーワンの会社になっていた。その差別化できる技術を持って、発展されることを心よりお祈りしたい。

地元にこのようなこだわりの会社と社長がいらっしゃったことが非常にうれしかった。

仕事に愛があれば・・・ 【岩本 亨】

2015/04/06
岩本 亨

3月初めのNHKテレビ「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で、宮城県秋保温泉にある「主婦の店 さいち」というスーパーマーケットを紹介していた。題して「二人の約束 魂の惣菜 食品スーパー経営者/佐藤啓二・澄子」。

自家製おはぎを1日平均5,000個売る店。今までの最高は25,000個とのこと。お総菜や弁当も自家製でおいしそうだった。社長と専務のご夫妻がスーパーマーケットに業態展開し、価格競争に疲れ果て、経営危機を乗り越えてたどり着いた今の経営方針。安売り競争するのではなく、お客さんに喜んでもらえるオリジナルなものを提供すること。

先週、義父の三回忌で岩手に行く予定があったので、仙台で途中下車し、レンタカーでお店を見に行った。おはぎの棚の前には人だかりができていた。その手前に陳列されているお惣菜はみんなおいしそうで、しかも安い。個食に対応して一人分の惣菜が100円~売っている。お弁当やちらしずしも魅力的だった。

店で販売されていた「惣菜弁当の殿堂 味付けは親心、盛り付けは活け花の心得 主婦の店さいち惣菜弁当全集」という書籍を購入したが、まさに「味付けは親心、盛り付けは活け花の心得」は的を射た表現と感じた。

6億円くらいの年商の半分を惣菜で稼いでいるという。平均的なスーパーの惣菜の構成比が10%くらいなので突出している。秋保温泉周辺の商圏人口は4,000人くらい。その商圏内のお客さんだけではなく、私のように県外から買いに来る人や観光客も来店しているらしい。訪問当日も駐車場には警備員が二人いて、対応していた。県外ナンバーもちらほらあった。

おはぎを2種類、惣菜を3種類、ホタテご飯といなりずし、高菜おにぎりを購入。完全に買い過ぎだと思いつつ、近くの公園でおはぎと惣菜を頂いた。やさしい味。スーパーやデパ地下の惣菜と見た目も味も違っている。それぞれから作った人の愛が感じられた。

東京に戻って、近所のスーパーで惣菜を見たが、同じようなメニューなのに、なぜこんなに違うのだろうか?と驚いた。盛り付けにこだわらないからか全くおいしそうに見えない。だから買いたくならない。「さいち」では見た瞬間に食べたい気持ちになった。視覚から食欲の中枢に情報が伝わるような実感(?)があった。同じようなものなのに、もったいない話である。

お客さんの声を聴いてメニューや味付けに反映させる。おはぎを始めたのも、「帰省してくる孫におはぎを食べさせたいけど、家では難しくて作れない」というおばあさんの声だったという。

品質にこだわり、顧客を大事にし、価格で勝負しないけど結果的に低価格で提供している仕組みを目の当たりにして、苦境の原因を環境のせいにしている経営者に見に来て、自分の経営姿勢を振り返って欲しいと感じた。

私自身の仕事に対する取り組み姿勢についても振り返る良い機会となった。

社長のやる気スイッチはどう入ったのか? 【岩本 亨】

2015/03/02
岩本 亨

とある地方の温泉旅館。客室数は15室。ここ数年毎期赤字が続いていた。貸出している金融機関担当者A氏は、以前は頻繁に旅館を訪れ、社長に経営状況を確認したり、具体的な取り組みをアドバイスしたりしていた。しかし、いくら言ってもB社長が代わらないので半ばあきらめて、ここ5年くらいは放置していた。

最近になってB社長から「業績が上がってきたので、一度見に来て下さい」と連絡があった。A氏が半信半疑で訪問したところ、部屋はきれいになっており、露天風呂付きの部屋もできていた。「借入金の返済猶予をしていながら、隠し財産でもあったのか?」と疑心暗鬼になり問いただした。B社長は、「金が無いから、家族でできる所まで改装し、プロにしかできない箇所は引退した大工さん等を自分で探して、個別にお願いして安く対応してもらった。1年に1室ずつのペースでコツコツ進めている。旅行代理店との付き合いも一切やめ、ネットエージェントとに絞り込んだ。口コミ評価ポイントが徐々に上がってきて、それが励みになっている。」そんな答えが返ってきた。事実確認のためお忍びで泊まりに行き、深夜自分で重機を操作している社長夫妻を確認した。

A氏がB社長に、「あんなに言うことを聞かず、やる気もなさそうだったのに、何で変わったの?」と聞いたところ、B社長から「娘が大きくなるにつれ、近隣の旅館が怪しげな商売をしているのを見て『ウチも同じなの?』と思われるのが嫌だった。また、息子にやる気のない父親と見られるのも忍びないと思った。それがきっかけでとにかくできる所まで自分の力で考えて、工夫してやってみようと思った。それを続けていくとお客さんにも喜んでもらうようになった。仕事が面白くなってきて、一生懸命に取り組んでいくうちに黒字化してきた」と答えが返ってきた。

変われば変わるもので、最近はB社長から時間に関係なく電話がかかってくるようになった。先日も深夜0時過ぎに携帯が鳴った。出てみるとB社長から「先月の試算表をまとめたら、計画以上に黒字になっていたので嬉しくて電話しました!」と弾んだ声が。既に寝室にいたA氏は「嬉しいけど、深夜は勘弁して・・・」と悲鳴を上げていた。

今日聞いたばかりの「やる気になれば想像以上のことができる」という実話を披露させていただきました。いくら周りが口を酸っぱくするくらいにアドバイスしても、本人がその気にならないと変わらない。その気になりさえすれば、この例の様に劇的な変化をもたらすことも有りうる。組織の中の人の活かし方にも通ずる話ですね。

持つべきものは人脈 【岩本 亨】

2015/02/02
岩本 亨

先月中旬、東海地方出張の全アポイントが完了し、名古屋駅に到着した時に、「岩本、久しぶり!」と声を掛けてくれた人がいた。リクルート勤務時代の同期のM君だった。彼の乗る予定の電車の時間が迫っていたため、その場で名刺交換をして、改めて会うことにした。メールで日程調整し、先日会った。

近況を報告し合い、当社(SKK:合同会社産業経営研究所)で「営業力強化研修」を企画していることを話した。彼自身も10年ほど前に独立してコンサルティング会社を経営しており、コンサルの主テーマは「営業」。既に70社強の支援実績を持ち、顧問先も10社弱持って忙しく活躍している様子だった。

顧問先の一つで、営業関連の講師を探しているとのことで、当社のネットワークで適任者がいれば対応できると伝えたところ、「是非お願いしたい」との答えだった。候補になりそうな人の説明をしたところ、F氏が適任ではないかということになり、面談のセッティングをした。

私も「営業支援」をサービスメニューの一つにしている。新規の営業活動は、対象を絞り込み、電話やメールでアプローチし、訪問してお話ししながら信頼関係を構築し、サービスや商品の説明をして、受注につなげる。大まかにいうと、こんな流れだ。今回のケースは既に信頼関係のある人が対象だったため、話がスムーズに進んでいる。改めて人脈の大切さを感じている次第である。

M君は、独自では社員教育の実施が難しい中小企業のために、教育サービスを提供できないか検討しているという。協力することで、少しでも日本の中小企業の発展に貢献できるのであれば、中小企業診断士として喜ばしい限りである。

都内T市役所での政策提案研修で 【岩本 亨】

2014/12/01
岩本 亨

今年も都内のT市役所で入職47年目の職員を対象とした「政策提案研修」の講師を務めた。

2009年に初めて「提案研修(業務改善)」を受託し、翌年から「政策提案研修」に変更されて以来、6年連続で担当させていただいている。

実質3日間の研修である。前半は二日連続の宿泊研修。後半は半日ずつ、間二週間を挟んで行った。

今年の前半は945日の2日間を自治大学校の施設を借りて、理論を修得しながら演習をふんだんに取り入れて行った。その中で、どのような政策提案をするか?をグループで協議しテーマを決定した。

96日~1113日まで、グループごとの活動により、テーマに沿って提案する政策を練り上げた。

そして、1114日午前中にプレゼン実践研修。本番までの二週間で、指摘されたことを修正し、12113:0015:20直前リハーサル、15:3017:00市長はじめ理事者へのプレゼンテーションを行った。

市長をはじめとした理事者の方々は非常に熱心に聴いてくださった。また、職員の方々にも聴講できるようにしたが、30名前後の方々に入れ替わりでお聴きいただいた。

T市研修担当の「より良い研修を」という強いこだわりのもと、昨年のコンテンツに「タイムマネジメント」を加えた。また、日程についても昨年まで後半を1日研修で午前中プレゼン実践演習、午後プレゼン本番で実施していたものを、二日に分け、間に二週間ほどの仕上げ期間を設定した。

効果は明らかだった。ともすればマンネリ化してしまって、講師にも緊張感が減退しそうな状況だが、見事にSTEP UPを実現された。

仕事において、何を実現するのかの目標の再認識をして、新しいことを追及することは重要である。多くの人が頭では分かっているが実際の行動ができないことを、見事に達成されたと感じた。そのこだわりと努力に敬意を表したい。来年度はどのような研修にレベルアップできるか楽しみである。